写真:Hadesさん(写真AC)
こんにちは。双極性Ⅱ型障害のとび太(@umayano2)です。
妊娠したい。子どもを持ちたい。
でも、気分安定薬や抗精神病薬は飲み続けても大丈夫なのだろうか?
赤ちゃんへの薬のリスクが気になりますよね。
この記事では、双極性障害の人が妊娠を考えるときに気になる、「妊娠中の薬の服用」についてまとめました。
精神科と産婦人科(不妊外来含む)の主治医に確認して、実際どんな風になったかをこちらの記事で詳しくまとめています▽

妊娠をとるか、断薬をとるか、または子どもを持たないか、、、。
私は、以前はこの3つの選択肢しか持っておらず、パートナー受け入れてもらえるかどうか不安で、結婚に対しても後ずさりしてしまっていました。
でも、実際には、もっと選択肢があると知りました。
妊娠を考える際の参考になれば幸いです。
目次
双極性障害の薬を飲みながら妊娠はできない!?
気分安定薬や抗精神病薬を妊娠中も飲むことについて、調べると、「飲まないほうがいい」という否定的な意見を目にすることがあります。
双極性障害の人が妊娠・出産する際には、断薬が必ず必要ということなのでしょうか。
双極性障害の薬を飲みながら妊娠すると、赤ちゃんが奇形をもってしまうのでしょうか。
いいえ、結論を言うと、妊娠するときに必ず断薬が必要ということではありません。
選択肢がいくつかあります。
双極性障害で妊娠するときの薬の選択肢
双極性障害の本で、次のような記述を見かけました。
Q8 双極性障害でも結婚して赤ちゃんを産めますか?
結婚も妊娠・出産も可能です。
(…中途略)
薬を続ける、薬の内容を変更する、薬を中止する、一時的に薬を中止して再開するなどいくつかの方法がありますから、主治医と一緒に最良の方法を考えていきましょう。
引用元:これだけは知っておきたい双極性障害 躁・うつに早めに気づき再発を防ぐ! ココロの健康シリーズ | 加藤 忠史 P.118
選択肢は4つある
妊娠を考えたときに、薬(特に気分安定薬)をどうするかは、4つの選択肢があります。
①これまでと同じ薬を続ける
②薬の内容(量や種類)を変更する ③薬を完全に中止する(断薬) ④一時的に中止して再開する |
『断薬』は、あくまで1つの選択肢のようです。
私の例
①の、「これまでと同じ薬を続ける」ことになりました。
ラミクタール(ラモトリギン)を1日に200mgです。
▽この結論になるまでの詳細はこちら



気になる『双極性障害の薬のリスク』について
双極性障害で薬を服用している人が、普段飲んでいる薬を変えたり、止めたりすることはとてもリスクや負担の大きいことですよね。
▽私は薬がないと体がキツくてしんどいです…



今までと同じ様に薬を飲みながらの妊娠を考えたときに、気になるのは薬のリスク(赤ちゃんへの影響)ではないでしょうか。
特に、赤ちゃんに奇形や障害がでてしまうのではないか、不安ですよね。
奇形の発生率:薬を飲んでいなくても3%
一般の人(薬を飲んでいない人)でも、奇形の赤ちゃんが生まれてくる可能性は3% 前後だそうです。≫引用元:『飲んで大丈夫?やめて大丈夫? 妊娠・授乳と薬の知識 第2版 | 村島 温子 』P.2
たとえ薬を飲んでいなくても、奇形を持った赤ちゃんが生まれてくることがあるんですね。
赤ちゃんが産まれてくるまでには、卵と精子が受精して、そこから無数の細胞分裂が繰り返されますよね。何度も何度も分裂がくり返されるので、途中でエラーが生じてしまうことも仕方ないと思います。自然な状態でも奇形率が0にならないのは、人間が生き物である証拠なんだなぁと思います。 |
生まれてすぐ分からないものを含めるともう少し多い
先程の3%という数字は、赤ちゃんが生まれてすぐ分かる奇形についてでしたが、生まれてすぐには分からない奇形もあります。
出生後に判明する奇形(心臓疾患など)や、精神発達遅滞(発達障害など)まで含めると、約7~8%の新生児は何らかの障害を持つ可能性があると言われているそうです≫参考:『飲んで大丈夫?やめて大丈夫? 妊娠・授乳と薬の知識 第2版 | 村島 温子 』P.128
気分安定薬の催奇形性
双極性障害の治療には、主に気分安定薬や抗精神病薬などが処方されるかと思います。まずは、気分安定薬についてまとめます。
双極性障害で用いられる気分安定薬は、抗てんかん薬としても使われることがあります。主な共通の薬は、
- バルプロ酸(デパゲンなど)
- カルバマゼピン(テグレトール)
- ラモトリギン(ラミクタール)
です。
てんかんの妊婦への調査では、
一般の妊娠での奇形発生率は、2~4.8% と言われていますが、一部の抗てんかん薬の服用によって、約 10% と 2~3 倍高くなります。
しかし、言い換えれば 90% は正常児であり、奇形発生率が高いか少ないかは個人によって捉え方が変わってくるのではないでしょうか。
たとえば、パルブロ酸(デパゲン)の催奇形性は、平均で11.1%になるという報告があるそうです。≫デパケンの妊娠への影響とは? | こころみ医学
気分安定薬(抗てんかん薬)の催奇形リスクは高くても10%
たとえ妊娠中に、「最も催奇形性のある抗てんかん薬」を服用したとしても、奇形を持つ赤ちゃんが生まれる確率は高くても約10%だそうです。
気分安定薬の催奇形性の比較
双極性障害に使われる主な『気分安定薬』は、
- リチウム(リーマス)
- バルプロ酸(デパゲンなど)
- カルバマゼピン(テグレトール)
- ラモトリギン(ラミクタール)
があります。これらの催奇形性について比べてみます。
日本周産期メンタルヘルス学会の2017年の資料では、妊娠中の服用について、次のように記述されていました。
|
※使用しないことを推奨されている薬だとしても、それが1番自分と相性がいい場合もありますよね。絶対ダメというわけではなく、量を変えたりするなどやりようがあるそうなので、主治医によく相談されてください。
気分安定薬の中で最も催奇形性が低いのはラミクタール
上記のように、気分安定薬の妊娠中の服用については、ラミクタールはOK(ただしできる限り少なく)で、それ以外は使用しないことが推奨されているようです。
妊娠を望む女性全員がラミクタールを使えれば良いのかもしれませんが、ラミクタールで気分が安定するかどうかは人によって相性があると思いますし、副作用のスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)が出ないことも必要です。
特に妊娠初期に注意
妊娠初期(妊娠4週~7週)、特に妊娠4週とかは、妊娠しているかどうかも分からないような超初期ですよね。生理が来る予定の日よりも前なので、妊娠で生理が遅れてると気づくことすらできません。
妊娠13週を過ぎれば少しだけリスクは下がるようです。
妊娠に気づいたときには7週を過ぎていた…ということもありえますので、双極性障害で妊娠を考える方は、妊活するよりも前に、主治医によく相談しておくことが非常に大切です。
妊活中は、葉酸の摂取も忘れずに…!
抗精神病薬の催奇形性
抗精神病薬の催奇形性については、気分安定薬よりも低いような印象です。
抗精神病薬はまったく安全とはいえないのですが、気分安定薬よりは奇形を起こすリスクが少なく、母体の治療もできます。
日本で保険適用になっている抗精神病薬は、
- アリピプラゾール(エビリファイ)
- オランザピン(ジプレキサ)
の2種類です。
抗精神病薬(非定型抗精神病薬)の催奇形性は比較的低いとはいえ、ゼロとは言いきれないところがあります。
もちろん妊娠中は、お薬を避けるに越したことはありません。しかしながらジプレキサを中止したら病状が不安定になってしまう場合は、お薬を最小限にしながら続けていくことが多いです。
その他の抗不安薬・睡眠薬・抗うつ薬の催奇形性
また、双極性障害の薬には、気分安定薬や抗精神病薬以外にも、抗不安薬(精神安定剤)や睡眠薬なども処方されることがありますよね。
- エチゾラム(デパス)
- ロラゼパム(ワイパックス)
- ブロチゾラム(レンドルミン)
- ゾピクロン(アモバン)
- ゾルピデム(マイスリー)
などです。
抗不安薬(精神安定剤)について
抗不安薬・睡眠薬などの催奇形性については、催奇形性を否定するような報告がほとんどだそうです≫参考:『飲んで大丈夫?やめて大丈夫? 妊娠・授乳と薬の知識 第2版 | 村島 温子 』P.130。
しかし、妊娠後期、特に産前は注意が必要だそうです。≫抗不安薬(精神安定剤)の妊娠への影響とは? | こころみ医学
抗うつ薬について
妊娠の際は、SSRIのパキシルと、三環系抗うつ薬(アモキサンを除く)は避けた方が無難だそうです≫抗うつ剤の妊娠と授乳への影響とは? | こころみ医学
催奇形性リスクを考えるべきは特に「気分安定薬」
以上のように、抗精神病薬や抗不安薬、睡眠薬(睡眠導入剤)、抗うつ薬については、リスクは0ではないものの、催奇形性について明らかな報告は無いようです。
気分安定薬ほど深刻に考えなくても大丈夫なのかもしれません。
※しかし飲まないに越したことは無いと思うので、私は妊娠してからこれらの薬は一切飲んでいません。
アルコールやタバコの方がよっぽど「胎児に良くない」
妊娠中の薬は特にリスクが心配になってしまいますが、薬以外では、アルコールやタバコなどは明らかに胎児に悪影響だと分かっています。
▽実際に双極性障害で妊娠されている人のツイート
答えはアルコールとタバコの方がよっぽど身体に悪いという見解でした。薬は良くないと言われてるものもかなり影響する確率はアルコールなどに比べて低いそうです。よほど重病の方の薬がやっと大きな影響、ガンとかのことですかね。とのことで。精神薬に関わらず、薬をあまり怖がりすぎなくてよいと。
— つよぽ@双極Ⅱ春出産予定 (@UpLkDtqp9TumdX0) August 26, 2019
妊娠中は、アルコールやタバコの他にも、あれはダメ、これもダメという情報をたくさん目にしますよね。
カフェインや、なま物、食品添加物、化学製品…。
調べ始まると、いくらでも「危険」という情報が出てきてしまいます。私も、発狂しそうになりました。
明らかに悪影響と明記されているもの以外は、少し肩の力を抜いても良いのかもしれません。
まとめ:リスクとメリットを天秤にかけて選択を
引用元:妊娠へのお薬の影響とは?よくある7つの疑問 | こころみ医学
双極性障害で妊娠するときは、計画的に!
参考文献
▽バルプロ酸やカルバマゼピンについて催奇形性を報告している文献
※脳神経外科で使用する疾患別説明書一覧 : 脳神経外科 | 船橋市立医療センター 説明書82:妊娠と抗てんかん薬 パルブロ酸について:日本周産期メンタルヘルス学会 周産期メンタルヘルスコンセンサスガイド2017初版 cq12.パルブロ酸を服用する妊娠可能年齢の女性に対するの対応は? |
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