こんにちは。
道東の牧場で、全くの初心者から2年半働きました。
牧場の仕事の3K…
- きつい
- 汚い
- 危険
の頭文字。
※『K』を何にするかは人によって違うかもしれません。
この記事では、
「酪農は本当に3Kなのか!?」
ということについて書いてみたいと思います。
結論を先にお伝えすると…
どちらかと言えば3Kだと思います!
でも、『酪農=ブラック』ということではないです!
牧場も一つ一つ違いますし、仕事をしている人の受け止め方も、ほんとに様々だと思います。
私が牧場に酪農従業員として勤めたのは2年半だけなので、知っていることは少ないですが、現地(道東・標津郡のあたり)の酪農のリアルなところをまとめてみます。
※生々しい事実の記載もあります。苦手な方はページをお戻しください。
『酪農の3K』とは?
△勤めていた牧場の牛。のんびり。
『酪農の3K』と似ている表現を引用します。
農業の3K、よく言われるのは、
「汚い」「きつい」「危険」の3つのKですね。
最近では「かっこ悪い」、「稼げない」と言われることもあります。
»農業の3K、新3Kの意味は?考え方で未来は明るくも暗くもなる – スタートアグリ
『3K』は、いわゆる『土方仕事』とか、『ブルーカラー』とか、『ブラックな仕事』…そんなニュアンスが込められているように感じます。
『酪農の3K』のリアルなところ
△あっ、逃げてる〜!追わなきゃ…
それでは本題の、酪農の『3K』について、実際どうだったか?順にみていきたいと思います。
※この記事の元にしているのは、私が酪農従業員として働いた2年半の経験と、その牧場時代に出会った、酪農の仕事をしている友人・知人から聞いた情報です。
なので、従業員目線になります。
【きつい】
どんな仕事でもキツいところはあると思いますが、酪農の【きつい】は、特に
- 体のキツさ
- 閉鎖的(人間関係)
- “家畜”という現実
という3つのキツさがあるなと思いました。
きつい①:体のキツさ
かなり機械化が進んでいるとはいえ、酪農の仕事はやはり力仕事が多めだと思います。
牧草を持ち上げたり、バケツを運んだり、牛が歩かないときは押したり。
手と腰を酷使しますね。
特に、棒状のものを握る動作が多いです。ホウキ、フン掻き、ミルカーなど。
また、仕事中は立ち仕事で座ることはほぼ無いです。(でも私の場合、一回の仕事が4時間くらいなので大丈夫でした)。
酪農の仕事は、はじめてやる人には、筋肉と体力がつくまではキツく感じるかもしれません。
でも、作業は毎日ほぼ同じことの繰り返しなので、慣れてくるとだんだん楽になっていきます。
私は3ヶ月くらいはかかった気がします。
△搾乳前のパーラーを牛側から見たところ。ベテランさんたちが既にスタンバイ。
酪農している人がみんな、ゴツいとかはないです。むしろ、牛の農家さんはしゅっとした細身の人が多めな印象です。細マッチョ。
重たい仕事はトラクターなどの機械でやってしまいますし、よく歩くからでしょうね。
ちなみに、私が仕事で痛めたところといえば、特に手です。
ばね指輪と、腱鞘炎?(たぶん手首ヒビ入ってた)になりました。
▽先輩から教わった、ばね指のテーピング
手だけでやらず、身体全体で力を入れるべきでした。(棒を持つときは滑り止めの強い手袋をして、それに引っ掛けるようにすると楽でした。)
また、コンクリートをたくさん歩くので、かかとが痛くなり、長靴にインソールを足していました。
仔牛の下痢という、洗礼
酪農をはじめてやる人を待ち構える、『仔牛の下痢』。
これもキツかった…。
人生で仔牛とあまり関わったことがない人だと、仔牛の下痢の菌を貰ってしまうことがあります。
(クリプトスポリジウムという菌が原因らしい、と場長は言っていました。)
就職して、仔牛がぴーぴー下痢をしているのを掃除して、1〜2週間ぐらい?して症状が出ました。
私もなったのですが、当時は便秘がちだったので、下痢したり詰まったりで紛らわしく(泣)、治療が長引くし生活まだ慣れてないし、心身しんどかったです。
(ちなみに夫は未経験で別の牧場に勤めていたのですが、餌やりメインで仔牛の世話はあまりしない担当だったからか、下痢しなかったみたいです。)
下痢のほかに、熱が出ることも。
前の従業員さんは点滴を1週間打ったらしいです…。
(こんなに従業員みんな下痢するのに、地域で割と知られてないのはなんで……?)
▽しばれた朝。-24℃!まつ毛も鼻毛も凍る!寒かったけどテンション上がりました。
休みが少ない…
生き物相手の仕事だから、24時間365日、と言いますが、それは牧場主の話。
従業員なら休みはあります。
私の牧場では、休みは月4でした。
就職した頃は、日中に昼寝できるし、残業は無いし。全然最高♪サラリーマン時代より良い!と思っていたんです。
でも、体調不良になったときに急には休みにくい、のが精神的に追われました。
(休むとなると、自分の代わりにヘルパーさんに来てもらう必要があり、その分牧場にお金を含め負担をかけてしまうことや、私以外の3人はほとんど体調不良で休んでいないというのもあって、言い出しにくかったです…。)
休みの仕組みは牧場によって様々で、従業員が5人くらいいる牧場の友人はすぐ休めていたりしてました。
従業員が多い牧場は、融通が効きやすいのでしょうね。
きつい②:閉鎖的(人間関係)
▽夜。真ん中の暗いところに脱走した牛がいます。社宅の真ん前。追いに行かなきゃ〜
閉鎖的なのがキツいかどうかは、牧場の人との相性が大きいと思います。
かなり大きい牧場でない限り、牧場内のメンバーはいつも同じ感じだし、牧場同士の距離も離れていて、風通しが悪くなりがちかもしれません。
酪農従業員をやっている友人たちも、悩みは、最後には人間関係でしたね。私もでしたが…。
人が悪いとかそういうのではなく、人が少ない上に閉鎖的だから、偏ったり、煮詰まっていきやすいんだと思います。
ヘルパーさんが来て一緒に働くときは、新鮮な気持ちになりました。
牧場以外の居場所も持っておくといいなと思いました。
訳ありな人が多い!?
開拓、移民の土地、北海道。
ほんとにいろんな人が集まっていました。
私の勤めていた牧場の場長は、「(牛の仕事は)訳ありなヤツが多いんだよ」と言っていました。
もちろん、訳なしの人(?)、人格の素晴らしい人もたくさんいます。
しかし実際、世間一般的な人よりも、生きづらい人(不器用な人?)とか、個性がハンパない人も多かったかもしれません。
酪農業界が『人不足』で、未経験者でもなんでもいいから人が欲しい、というのがあって、誰でも飛び込みやすくなっていると思います。
なので、私みたいな社会不適合者でも雇ってもらえたんだと思います。
そんな感じで、ほんとにいろんな人が働いているので、カオスというのか、牧場中の人間関係がキツくなる可能性は高いと言えると思います。
きつい③:”家畜”という現実
△めんこくて優しい生き物。
牛は、『経済動物』。
お金にならなければ、殺す。
死ぬときはほとんど人の手によるものです。
『死』と身近な仕事だと分かって就職はしましたが、そういうものだと分かっていても、今も思い出してしまいます。
牧場によりますが、牛に負担がかかりすぎる牧場は、想像するだけでキツい…。
2〜3年で廃用(肉になる)になるとか、1日3回搾乳であんまり乳でない上に乳房炎も多いような、”工場”っぽい牧場の話を聞くと、そんなに牛に負担かけてまで牛乳飲みたいとは思えなくなります…。
基本的に、お乳が出なくなったら廃用です。まだ普通に歩けるんですね。
牛を見送るときは何とも言えない気持ちになりました。
肉になるといっても、おそらく、ペットフード用とか。人が食べる肉ですらなく。
場長はよく、トラックに乗るのを嫌がる牛を見ながら「ミンチになりたくねぇもんなぁ…」と言っていました。
痛みや恐怖、苦しみが、全く救われることなく死んでゆく牛を見ると、何のために…と思ってしまうときもたくさんありました。
人は麻酔や痛み止めをたっぷりしてもらえるけど、家畜はお金優先なんだなぁ、という現実に向かうと、固まるしかできませんでした。
表ではヘラヘラして平気なフリをしてたと思います。
こういう”家畜”の仕事の精神的なキツさも、慣れはすると思います。
リアルな話をしてしまいましたが、
牛に優しい牧場も必ずあります。
道東は、本州に比べたら、のんびりひろびろ飼っている牧場が多いと思います。
【汚い】
私と同じく酪農従業員をやっていた夫に、『酪農の3Kとは?』と訊いてみたところ、
- きつい
- 汚い
- くさい!
と言っていました。
実際、牛のうんこが顔に飛んできたりはします(笑)。
※牧場に勤めたら『うんち』ではなく『うんこ』と言うようになりました。うんこー!って叫んでました(笑)
牧場の『きたない』は主に、牛のうんこによる汚さと臭さですが、
私は化学物質系のケミカルな臭いよりは断然マシ!と思いました。
私の勤めていた牧場では、ご夫妻が綺麗好きで、スラリー(うんこを溜めるところ)に、臭いを抑える菌?をいれていたのもあってか、牛舎の外はほとんど臭くなかったです。
△務めていた牧場のスラリータンク(右側の大きいプールのようなもの)
私は、自分の牧場以外に4つの牧場に行ったことがあるのですが、臭いも、牧場それぞれでした。
掃除の仕方とか、エサとか、牛のストレスとか、そういうもので臭いも変わってくるのかもしれません。
きっと、牛に優しい牧場は、においも優しい…。
確かに、牛のうんこは汚くて臭いですが、
作業中は手袋もしますし、
人に会うときは、シャワーを浴びれば大丈夫ですよ!
仕事が上手い人は、ツナギも汚さずきれいで、さすがだなぁと思いました。
【危険】
△光かがやく。
牛に蹴られたとか、牛と壁の間に挟まれたとか、頭でアッパー食らったとか。
床のうんこや氷で滑って転んだとか…。
機械もよく扱うので、指を挟んで救急車、とかも聞いたことあります。
一歩間違えれば、命の危険もある仕事だと思います。
(世間一般の仕事も、事故とかの可能性はありますから、それと同じかもしれません。)
ケガが多発している牧場は、牧場の雰囲気もあるのではないかと思います。
人間関係がギスギスしていたり、慌ただしかったり…。
牛の扱いが荒っぽいと、牛に攻撃されやすくなるのかもしれないなぁと思いました。
自分がイライラしてるときに限ってシッポで顔を叩かれたりしましたが、多分、私のイライラが牛に伝わっていたんだと思います。
攻撃されるときには、何か理由がありそうです。
牛は、ほんとに、すごく優しい動物でした。
もし、これを読んでくださっている方が牧場に初めて就職しようとしていたら、
- 牛にどう接すればいいのか
- 何に気を付ければいいのか
就職したらすぐに、必ず教えてもらてくださいね。
牛に足を踏まれたときの対処法
ちなみに、牛に足を踏まれたときは、反射的に引き抜くと指が折れるので、牛を押してどかすようにするのが良いそうです。
私も、何度も牛に足を踏まれてたな…。小指ばっかり。
若牛の方がヒヅメが尖っていて痛いのは本当でしたね。
ちなみに:私がいた牧場は…
△すっかりきれいに食べたね!
参考のために、私がいた牧場の仕事をざっくり紹介します。
3Kなところもあったかもしれないし、そうじゃないところもある牧場だったと思います。
- 個人経営
- 搾乳牛120頭ほど
- 牛舎:フリーストールとつなぎ牛舎
- パーラーは8頭ダブル(一回の搾乳は2時間ほど)
- 勤務時間:朝夕の2回(3:30-7:30、14:30-18:30ほど)、残業ほぼ無し。
- 月の休み:4日
- メンバー:基本は4人。(牧場の夫妻と、もう1人の従業員と、私。定期的にヘルパーさんも来る)
私の仕事の担当は、みんなと同じ酪農作業全般(搾乳、除糞、エサやり、牛の移動など)でした。
これを見て、いい牧場だねぇ〜と言う方もいると思いますし、けっこうしっかりめだったね!と言う方もいると思います。
1週間くらいで辞めた人も居たらしいですが、牧場が理由なのかどうかは分かりません。
牧場の皆さんは、全くの未経験の私に、1から丁寧に仕事を教えてくださりました。
社宅が敷地の真ん中だったのもあり、良くも悪くも家族との距離が近かったです。
犬が放し飼いされていて癒されました。
酪農がやりたくてやる人もたくさんいる
△冬の朝陽と牧草ロール
ここまで、酪農のマイナスイメージのことばかりお伝えしてきてしまいました。
牧場はほんとにいろんなところがありますから、すごく3Kな、ブラック牧場も、やっぱりあると思います。
私がいた標津郡では、地元の人は酪農は選ばない、と聞いたことがあります。
私がいた牧場の場長も、牛の仕事に劣等感というか、ネガティブな言い方をしていることがありました。
現地で酪農をやっていた若い人は、確かに、農家さんの息子さん娘さんとか以外では、外から来た人(私のような移住してきた人)の方が多かったかもしれません。
地元の若い人で酪農関係の仕事をしている人は、農協に勤めたり、人工授精師や酪農ヘルパーをやっている印象です。
でも、一方で、「酪農がやりたい」から、酪農をやっている人もたくさんいます。
牛がかわいいとか、動物と触れ合う仕事がしたいという理由で、本州から来た友人も何人かいました。
新規就農している人たちは、牛の仕事に惹かれたから酪農の人生を選んだのでしょう。
なので、酪農には確かに『3K』な面もあるけれど、魅力もたくさんある仕事だと思っています。
まとめ
牧場の仕事(酪農)の3Kは、
- きつい
- 汚い
- 危険
でした。
繰り返しになりますが、3Kな牧場ばっかりじゃないです!
『ホワイト』な牧場も必ずあると思います。
牧場の仕事、またやりたいなぁ…。
▽牧場で働いてみたい人へ

▽牧場で働いてみて『良かった』こと



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