こんにちは。とび太(@umayano)です。
私は25歳~27歳のとき(2016年5月~2018年11月までの2年半)、北海道の道東にある牧場で酪農従業員として働いていたことがあります。
その経験の中から、「牧場で働いてみてよかったと思う理由」について書きたいと思います。
目次
勤めていた牧場について
私が牧場で働いていた頃の状況をざっくりと紹介します。
牧場の場所
北海道の道東(標津郡)
知床半島へ思い立ったらすぐ行ける距離感で、海から車で20分くらい。
いわゆる「僻地」ですが、大きめの街が30分くらいの距離にあり、暮らすのに不便はありませんでした。
牧場で飼っている動物
- 乳牛(ホルスタイン種)…搾乳牛120頭くらい
- 犬…2~3匹
馬は勤め先にはいませんでした。馬は師匠の牧場で乗せてもらっていました。 |
仕事について
- 職業名 :酪農従業員
- 作業内容:酪農作業全般(搾乳、除糞、エサやり、牛の移動など)
- 勤務時間:朝夕の2回(3:30-7:30、14:30-18:30ほど)
- 休み :月4日
- 従業員 :2人(牧場の夫妻と、おじさんと、私)
家族経営の牧場だったため、いろいろなことを経験することができました。
この牧場に就職した理由
馬の師匠の紹介の紹介で出会いました。
選んだ理由は、師匠の牧場から近かったのと、社宅があったことが大きいです。
求人票も見ずに、一度見学しただけで決めてしまいました。
それでは、本題の「牧場で働いて良かった」と思う理由を紹介します。
人生をやり直せた
△牧場からの道。よく散歩したなぁ。
私は、牧場に就職する前は、東京の大企業で会社員として働いていました。
が、1年と少しで「うつ」になり、休職。
自分や、これからの人生に絶望してしまい、退職。
そんなタイミングで馬の師匠と出会います。
そして、道東の牧場生活を知って、ここで人生をやり直したいと思いました。
からっぽで、何も無い自分のまま北海道に飛びました。
そこから、私の人生は再び始まりました。
健康になった
牧場に就職した当時、私はボロボロでした。
体力は、「うつ」からの回復途中で、果たして牧場の力仕事なんかできるんだろうか、という感じでした。
牧場の場長からはよく、「ねーちゃんは今までペンしか握ったことねぇもんな」と言われたものです。
生活リズムが整う
「乳牛」の牧場では、毎日ほぼ同じ時間に仕事をします。
私が酪農の仕事を選んだ理由には、強制的にでも生活リズムが整えられるかな、と思ったのもありました。
体も鍛えられるし、うつからのリハビリ(はじめの一歩)に良さそう、と。
(ただ、朝が3:20起きだったのですが、早すぎて、健康に良い早起きのレベルを越えていたかもしれませんが^^;)
いい運動になる
牛の仕事は、体を使います。
ほぼ毎日1日に8時間の運動(ときどき筋トレ)ができることになります。
一緒に働いていた酪農ヘルパーさんが、「お給料もらって体動かせるのっていいよな」って言っていたのをよく思い出します。 |
馬の師匠のところで乗馬もしていたので、1日中動き回っているような日もありました。
よく食べる
そして、牧場で働いていると、たくさん食べます。
体を動かしているのもありますし、北海道に美味しいものがたくさんあって、ご飯が進みます。
![]() △3食自炊でした。道東の豊かな食材に満たされる日々。この日は、ホッキご飯、原木しいたけの味噌汁、こごみとなめこの和え物、フキ。ホッキは地元の魚屋さん、しいたけは牧場のおじさんの自家製をいただいたもの、山菜は自分で採ったもの。 |
規則正しいリズムの生活。
よく働き、よく食べる。
そうして過ごすうちに、私はムキムキの健康体になりました。
私は卵巣嚢腫(皮様嚢腫)持ちだったのですが、それも無くなっていました。
他の家庭を知れた
牧場に勤めていたときは、社宅を借りて暮らしました。月1万5千円の、光熱費込み。
社宅は小さな一戸建てのような感じで、ほぼ新築だし、ロフトもあってとても気に入っていました。
ですが、、、何が、というと、、、、その社宅は牧場の「ど真ん中」にあったんですね。
![]() △中央の小さな一軒家が社宅。その奥に見える三角屋根が牧場主のお家。 |
社宅があったのは、牧場の家族が住んでいる母屋のすぐとなり。牧場の敷地のど真ん中。
私が出かければ場長にはすぐ分かりますし、一方私からは、牧場の家族がどんな風に暮らしているかが見えました。
牧場の家族との近くて良かったこと
そんな感じなので、プライベートはあるとはいえ、ほぼ毎日牧場の家族と過ごしているようなものでした。でも、この近さがあったからこそ良かったのは、「他の人の家庭」を知れたことでした。
私は、「カルチャーショック」と言っていいくらい、牧場の夫妻の考え方や、家族のあり方に刺激を受けました。良い刺激です。
たとえば、印象的だったのは、息子さんたちの将来は、本人たちの気持ちを優先しようとしていたことです。
牧場主は「(牧場を)子どもたちが継いでも継がなくてもいいようにしておく」という考えを持っていました。
私が育った家の考え方は、牧場主の考え方とはまるで逆でした。【村文化】みたいだなと思えました。自分がアダルトチルドレンだということにも気づくことができました。 |
叱ってもらえてうれしかった
そして、牧場の夫妻は、「今」ここにいる私を見てくれました。
叱る時は叱ってくれました。
不器用すぎてその場ではすぐ応えられなかったけれど、人として対等に扱ってもらえたことが、本当に嬉しかったです。
私は、「健康な家庭」で育つことができなかったけれど、牧場で「育つ」をことをもう一度やり直せた気がします。それまで曲がって育ってしまった私の、「認知のゆがみ」を、どれだけ真っ直ぐにしてもらえたか分かりません。
北海道の考え方に惚れた
△社宅の裏には牧草地!牧草地を歩けるのは従業員の特権です
北海道の良さ。
それは例えば、「大自然」とか「美味しいもの」とかイメージしやすいかと思います。
それに加えて、私は牧場の世界に飛び込んで、「考え方」や「文化」も、とても素晴らしいと知りました。
大切なものを大切にする。
自分と相手を対等に、お互いにメリットがあるのを良しとする。
やりたいことや必要なことをシンプルに行動に移す。
派手さとか見た目よりも、ほんとうのことを見ている。
合理的、とか素朴、とか、真っ直ぐとか、表現されることもあるかもしれません。
表現が難しいのですが、私はこの北海道の文化に、とても魂をゆさぶられました。
それまで、北海道民は何故これほどまでに「北海道愛」が強いのかと思っていたのですが、今ではすっかり私も北海道ラブです。いつかまた北海道に住みたい。 |
学生時代に札幌に住んでいたこともあったのですが、その4年間では、「北海道の価値観」の魅力にあまり気づけていなかったように思います。
都会に比べて、僻地ほ牧場は、道民と過ごす時間が格段に濃かったのでしょうね。
恥ずかしい自分を全部さらけ出せた
そして、そんな北海道の土地柄だったからこそ、私は思いっきり失敗できました。
周りの人から見たら「こいつイタいなぁ~」と思われるようなこともたくさんしましたし、後で自分の恥ずかしさに気づいて床に伏せて悶えたこともありました。
でも、そんな日々すら愛おしいと思えました。
それまでの人生ずっと、こわくてできなかったことを思いっきりできることが、とても嬉しかったです。
人の魅力なのか、大自然のおかげなのか、
北海道は、人を開かせる不思議な魅力がある土地だなぁと思います。
生きていける、と思えるようになった
△道東にいると空をよく見上げました。おっきな虹!
牧場で働くまでの人生にも、難関と言われる大学に合格したり、大きな会社に採用されたり、「すごいこと」はたくさんありました。
なのに、進めば進むほど、私は生きてゆく自信が無くなっていました。
でも今、私は自分の力でいきてゆける、そう思えるのです。
手に職付いた感
牧場に就職したとき、牛の触り方も、どこに立ったら良いのかも分かりませんでした。
私は完全に「未経験」で、技術も知識もありませんでした。
それは、それまでの、「学歴」や「資格」を抱えて生きていたときとは全然違いました。
会社に勤めていたときは、資格を取り、研修をたくさん受け、OJTなどでいろいろなことを教えてもらったので、「スキル」は少しでもあったかもしれません。でも、「自分はなんにも持ってない」感じが消えませんでした。
会社員の仕事と比べて、牧場での仕事は「現場」の仕事だなと思います。
資格があるとかスキルがどうこうよりも、「その場でどれだけできるか」の方が重要です。
![]() △搾乳室(パーラー)。ここで毎日のように、朝と夕2時間ずつ乳搾りをしました。 |
ゼロから始めたという感覚は、ものすごく自信を与えてくれる
実際に牧場で働いてみて、2年半の経験はベテランの人から見たら少ないかもしれませんが、2年も働くと北海道の他の牧場で雇ってもらえるくらいにはなれるのではと思っています。
何にもなくても、この身1つあれば、私は働ける。
食べていくことはできる。
何にも無くなっても、牧場の世界に戻れる。
私は、そう思えたことで、
「きっと生きてゆける」
と自分を信じられるようになりました。
一生の友ができた
「僻地」には、若い人っているのかな?
牧場に入る前の私は、道東の最果ての酪農地帯には、あまり同世代の人は居ないのかと思っていました。
でも、実際には20代の人はたくさんいて、女性も想像以上に集まっていました。
そして、友人もできました。
出会いのきっかけは、馬の師匠のところだったり、町で開催している交流会だったり、牧場関係の紹介だったり、いろいろでした。
![]() △友人と二人でクリスマスパーティー。このケーキは、一緒に働いているヘルパーさんから頂いたもの。こんな風な時間ができると想像もしていませんでした。嬉しかったな。 |
同じような境遇をもっていた子や、同じような感覚をもっている子がいました。
それまでの人生ではあまり話さなかったようなこともたくさん話しました。
自分を大切にできなかったり、誰かのために生きてしまったり…。
同じような人間が、同じような環境を求めて集まるのでしょうね。
僻地や自然、牧場、動物が好きな人と出会いたいと思ったら、道東の牧場に飛び込んでみるのもおすすめですよ。
自分が何をやりたいか言えるようになった
自分が本当にやりたいことを、「やりたい」と言葉に出す。
これができたのは、この移住が人生ではじめてでした。
そしてそこから始まった牧場生活。
「want」の気持ちを素直に出している人たち、動物たちに囲まれて過ごして、私もだんだんと自分の「want」を言えるようになっていきました。
馬や牛と接するときは大声をだすことも多いのですが、これも良いブレイクスルーになりましたね。 |
自分は何が好きで、どんなときに「心地よさ」を感じるのか。
動物たちや、きれいな空気、景色に囲まれていると、私は私であることを求められているようでした。
「やりたい」はどんどんつながって、『うまやの宿』の夢を見つけました。
3年前は死にたいと思っていたのが嘘みたいに、私は今、生きたくて仕方ありません。
牧場生活は「またやりたい」と思える
![]() △牧場の牛たち。しっぽの付け根をかいてあげると喜ぶ。 |
酪農の仕事は「3K」というのを耳にしたことがあるかもしれません。
農業の3K、よく言われるのは、
「汚い」「きつい」「危険」の3つのKですね。
最近では「かっこ悪い」、「稼げない」と言われることもあります。
»農業の3K、新3Kの意味は?考え方で未来は明るくも暗くもなる – スタートアグリ
確かに、酪農の仕事をしていてしんどいこともありました。
体が痛くて仕方ないときも、人間関係の濃さゆえに泣いたときも。
が、今振り返ると、またやってもいいなと思えます。
酪農の「3K」、私バージョンは、
①健康、②かわいい、③感動!
北海道だから、自分の人生をやり直せたし、これからの人生も楽しみになった。
飛び込んで良かった。心の底から思います。
人生をやり直すのに「牧場」を選んでほんとうに良かったなと思っています。
ぜひ酪農の世界へ!
「牧場で暮らしてみたい」「酪農の世界を見てみたい」…。
少しでも「やりたい」気持ちがある人は、ぜひ飛び込んでみて欲しいな、と思います。
私は未経験で飛び込んでみて、牧場の仕事は想像以上に引く手あまただな、と感じました。そして2年もやれば、どこの牧場でもきっと雇ってもらえるでしょう。
近年、牧場の大型化と機械化が進んでいるとはいえ、同じくらい人不足も進んでいます。牛乳は輸入できないものですし、牧場がゼロになる可能性はそんなに無いのではないかと思っています。 |
動物と緑と雪に囲まれた、健康な生活が叶いますよ~!
![]() △牧場の犬は放し飼い。社宅から出ると、こうして待ってくれていたり。 |
最後までお読みくださりありがとうございました。
私の経験でよければ、なんでもお伝えしたいと思っていますので、お気軽にご質問ください^^
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コメント
はじめまして
興味深く記事を読ませていただきました。
1つ聞きたいことがございます。
牧場での暮らしの中、精神科への通院はどうやって行ってたのでしょうか?
牧場から病院までは遠いでしょうし…
もし良ければお聞かせください
はじめまして!返信が遅くなってしまってごめんなさい。
こうして酪農に興味がある方に読んでいただき、コメントもくださり、ありがとうございます!とっても嬉しいです。
牧場に勤めている当時は、札幌の精神科(心療内科)に「オンライン診察」で受診していました。
初診だけ札幌に行って、その後は半年に1回ほど札幌で直接受診する以外は、基本的に社宅の部屋で診察を受けていました。スマホのテレビ通話の感じです。
道東から札幌に行くときは、冬だったのもあり、バス+電車がメインでした。
僻地だと精神科の通院は悩ましいですよね。私も、牧場があった町立病院(車で20~30分)の精神科の悪い評判を聞いてしまい、釧路(車で1時間半ほど)の精神科を探そうと思ったのですがどこも数ヶ月待ちと言われ、絶望しそうになりました^^;(1度受診してしまえば、再診からは予約は比較的取りやすいはずです!)
距離が遠い病院にした場合、冬場はどうやって通うのかとか、当日の体調は大丈夫かとか、仕事の休みは取れるのか…とか私はとても不安でした。
もしお薬がほぼ確定してきていて通院はお薬をもらうのがメイン、という方であれば、牧場からの近さで精神科を選んでもいいかと思います。しかし、初診とか、いざというとき相談できる技量のある医師にかかりたいと思うと、いい病院に通いたいですよね…!
ご質問に答えられていないかもしれないので、詳細について、後日追って記事にまとめさせて頂きたいと思います。
ご質問やご不明点などありましたらまたぜひ^^
とても遅くなってしまいましたが、僻地での精神科通院について、記事にまとめました。
ブログトップの『Q&A』、もしくは下のURLよりご覧いただけます。
https://umayano.com/consultation-at-east-hokkaido
記事のタイトルは『Q3.【僻地(道東)での精神科通院】「オンライン診察」が神!でした』です。
もしよければ参考になさってください。
ご質問ありがとうございました。